がんの痛みを治療するとき、とても重要なのが「どのように痛むか」を知ることです。がんの痛みにはいくつかの特徴があります。今回はその特徴を少し解説したいと思います。
「痛い」という症状は同じでも、一日の大部分にわたって続く痛み「持続痛」と、一時的に強くなる痛み「突出痛」では、薬の使い方が異なります。がんによる痛みを考えるときには、「持続痛」と「突出痛」に分けて考えると分かりやすくなります。
持続痛とは?
「持続痛」は、一日の大部分にわたって続いている痛みです。「朝から晩まで腰がずっと痛い」「何もしていなくても胸が痛む」「夜も痛くて眠れない」といった状態です。
このような痛みには、一定時間効果が続く鎮痛薬を定期的に使用し、痛みの土台を抑えていきます。
突出痛とは?
持続痛がある程度落ち着いていても、一時的に強い痛みが出ることがあります。これを「突出痛」と呼びます。
「普段は大丈夫なのに身体を動かすと急に痛む」「夜中に突然強い痛みが出る」「排泄や着替えのときだけ強く痛む」といった症状があります。このような一時的な強い痛みに対して使用する追加の鎮痛薬を「レスキュー薬」と呼びます。

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図の青い部分が持続痛、そこから一時的に高くなる部分が突出痛のイメージです。この2種類の痛みを分けて考えると、定期薬とレスキュー薬の役割が分かりやすくなります。
定期薬とレスキュー薬は役割が違います
定期薬は持続痛を抑えるために使用します。例えば医療用麻薬の中には12時間、24時間効果のある医療用麻薬や1~数日間効果が持続する貼付剤がそれに該当します。
| 商品名 | 成分 | 剤形・規格 | 通常の投与間隔 |
|---|---|---|---|
| MSコンチン錠 | モルヒネ | 徐放錠:10・30・60mg | 1日2回。(Japan’s Image Database) |
| パシーフカプセル | モルヒネ | 徐放性カプセル:30・60・120mg | 1日1回。(PMDA) |
| オキシコンチンTR錠 | オキシコドン | 徐放錠:5・10・20・40mg | 1日2回、12時間ごと。(PMDA) |
| ナルサス錠 | ヒドロモルフォン | 徐放錠:2・6・12・24mg | 1日1回。(PMDA) |
| フェントステープ | フェンタニル | 貼付剤:0.5・1・2・4・6・8mg | 1日1回、24時間ごとに貼り替え。(PMDA) |
| ワンデュロパッチ | フェンタニル | 貼付剤:0.84・1.7・3.4・5・6.7mg | 1日1回、24時間ごとに貼り替え。(PMDA) |
| デュロテップMTパッチ | フェンタニル | 貼付剤:2.1・4.2・8.4・12.6・16.8mg | 3日ごと、72時間ごとに貼り替え。(PMDA) |
| メサペイン錠 | メサドン | 錠剤:5・10mg | 通常1日3回、8時間ごと。使用には所定の要件あり。(PMDA) |
レスキュー薬は一時的に強くなった痛みに対応するために使用します。レスキュー薬を使用することは、治療が失敗したという意味ではありません。痛みの波に対応するための大切な治療方法です。
| 商品名 | 成分 | 剤形・規格 | 使用方法・特徴 |
|---|---|---|---|
| オプソ内服液 | モルヒネ | 内服液:5・10mg | 飲むタイプの即放性製剤。(PMDA) |
| アンペック坐剤 | モルヒネ | 坐剤:10・20・30mg | 肛門から投与。内服が難しい場合などのレスキューに使用。(PMDA) |
| オキノーム散 | オキシコドン | 散剤:2.5・5・10・20mg | 粉薬の即放性製剤。(Japan’s Image Database) |
| オキシコドン内服液「日本臓器」 | オキシコドン | 内服液:2.5・5・10・20mg | 飲むタイプの即放性製剤。 |
| ナルラピド錠 | ヒドロモルフォン | 錠剤:1・2・4mg | 錠剤の即放性製剤。(Japan’s Image Database) |
| アブストラル舌下錠 | フェンタニル | 舌下錠:100・200・400μg | 舌の下で溶かし、口腔粘膜から吸収させる。使用対象に制限あり。(PMDA) |
| イーフェンバッカル錠 ※2027年3月末 販売中止 | フェンタニル | バッカル錠:50・100・200・400・600・800μg | 上あごの奥歯の歯茎と頬の間で溶かす。使用対象に制限あり。(PMDA) |
レスキュー薬は我慢してから使うもの?
強い痛みになるまで我慢すると、薬が効くまでの時間がつらくなってしまいます。医師からレスキュー薬が処方されている場合には、指示された範囲で使用します。
身体を動かすと毎回痛むなど、痛みが起こるタイミングを予測できる場合には、医療者と相談しながら活動前の使用を検討することもあります。
レスキューを何回も使っている場合は?
レスキュー薬の使用回数と効果は、治療を調整するための大切な情報です。頻回に必要になる場合には、普段使用している定期薬の量や種類、投与方法などを見直します。
一方、眠気などの副作用が強ければ、単純に薬を増やすのではなく別の方法を考えることもあります。「いつ、何回使い、どの程度効いたか」を記録しておくと診察時の薬剤調整に役立ちます。
飲み薬が使えなくなったら?
病状によって薬を飲み込むことが難しくなっても、痛みの治療を諦める必要はありません。貼付剤、坐薬、注射など、内服以外の方法があります。
在宅医療では持続皮下注射を使用することもあります。小型のポンプを使って鎮痛薬を少量ずつ持続的に投与し、必要に応じて追加投与を行う方法です。患者さんの状態に応じて、自宅や施設でも痛みの治療を続けることができます。
痛みを数字だけで判断しない
診察では痛みを0〜10で表していただくことがありますが、数字だけが重要なのではありません。「痛くて眠れない」「トイレに行くのが怖い」「食事ができない」「家族と話している時間は楽に過ごせる」といった情報も治療調整に重要です。
痛みの治療の目的は、単純に痛みを0にすることだけではありません。その方が何をしたいのか、どのように過ごしたいのかを確認しながら、鎮痛効果と副作用のバランスを考えます。
まとめ
がんの痛みには「持続痛」と「突出痛」があります。持続痛には定期的な鎮痛薬を使用し、一時的に強くなる突出痛にはレスキュー薬を使用します。レスキュー薬の使用状況や効果を確認しながら、定期薬の量や種類を調整していきます。
「痛み止めを使っているのに痛い」「レスキューをどう使えばよいか分からない」「眠気が強くて薬を増やすのが心配」「薬を飲めなくなってきた」といった場合にも、うぐいす在宅診療所へご相談ください。
