着替えるだけで息が上がる。横になるとかえって苦しい。息苦しそうな家族のそばで、何をすればよいか分からない。在宅療養では、こうした困りごとが生活の中に入り込むことがあります。
息苦しさには、原因に対する診察や治療とあわせて、姿勢や周囲の環境を整えることで和らぐ部分があります。この記事は、医療者に相談している、普段から続く息苦しさへの工夫を中心に紹介します。急に始まった息苦しさや、いつもと明らかに違う苦しさは、家庭で様子を見る対象ではありません。
息苦しさは、本人の感覚を大切にします
息苦しさは、「空気が足りない」「胸が詰まる」「呼吸に力がいる」など、人によって表現が異なります。がんだけでなく、肺や心臓の病気、感染症などでも起こります。同じ病気でも、動いたときだけ苦しい人と、休んでいても苦しい人では、必要な支え方が違います。[2]
指につけて血液中の酸素の状態を調べるパルスオキシメーターの数値は、診療の参考になりますが、その数字だけで「苦しくないはず」と判断することはできません。「何をするとつらいか」「どの姿勢なら少し楽か」を聞くことも大切です。ご本人が話せる場合は、その訴えを出発点にします。[3]
不安が重なることもありますが、「気の持ちよう」と決めつけないでください。つらさを伝えるために長い説明を求めず、まずは休める場所を一緒に探しましょう。
まずは、体を支えて楽な姿勢を探す
横になって苦しい場合は、背中を起こしてみると楽になることがあります。ベッドの角度を変えたり、背中や腕の下に枕・クッションを置いたりして、力を抜けるように支えます。椅子では、足を床につけ、腕をひじ掛けやクッションに預ける姿勢も選択肢です。[2]
「この角度が正解」と全員に同じ姿勢を勧めるものではありません。痛みやめまいが出る姿勢は避け、本人の返事や表情を確かめながら調整します。移動そのものがつらいときは無理に座らせず、訪問看護師などに、今いる場所での支え方を相談してください。
顔にやさしい風を当てる方法があります
小型の扇風機やうちわで顔に風を送ると、息苦しさが和らぐことがあります。慢性的な息苦しさのある人を対象とした比較試験でも、顔に風を当てる方法による短時間の症状緩和が報告されています。ただし、全員に同じ効果が出るわけではなく、急な呼吸困難の原因を治療する方法でもありません。[1]
本人が心地よいと感じる弱い風から試します。寒い、目が乾く、かえって苦しいと感じたら止めましょう。風を当てることは、酸素を補うこととは別です。在宅酸素を使っている場合も、風で楽になったからといって酸素を止めたり、苦しいからと流量を変えたりせず、あらかじめ受けた指示に従ってください。
動作を小分けにし、休める場所をつくる
朝の洗面、着替え、食事を続けて行うと、途中で息が上がってしまうことがあります。体調が落ち着いているときに、動作の順番や休み方を医療者と考えておくと、暮らしに合った工夫を選びやすくなります。呼吸のリハビリテーションや生活上の支援は、息苦しさを和らげる取り組みの一部です。[3]
例えば、服を手の届く場所に準備して座って着替える、洗面の前後に休む、よく使う物を一か所にまとめる、といった方法があります。これは生活の組み立て方の例であり、決まった運動量をこなすための指示ではありません。
ご本人が大切にしていることも聞いてみましょう。「家族と食卓に座りたい」なら、食前の身支度を手伝ってもらう。「窓の外を眺めたい」なら、移動の負担が少ない場所に椅子を置く。限られた体力を何に使いたいかで、支援の形は変わります。
家族は、落ち着ける時間を一緒につくる
そばにいる方は、短い言葉で「今の姿勢はどう?」「少し休もうか」と確認してください。返事を急がせたり、何度も大きく息を吸うよう促したりせず、ご本人のペースを尊重します。呼吸法を教わっている場合は、その人に合った方法を一緒に思い出す程度にしましょう。
医師から症状が強まったときの薬や対応を説明されている場合は、使う場面と、使っても改善しない場合の連絡先を確認しておきます。他の人に処方された薬を使ったり、その場で量を増やしたりはしません。ご家族だけで判断し続ける必要はありません。
急に苦しくなったときは、工夫を試す前に連絡を
突然の強い息苦しさ、胸の強い痛み、意識の様子が普段と違う場合は、直ちに担当医や訪問看護師へ連絡してください。扇風機や姿勢の工夫だけで様子を見続けず、状況を伝えて指示を受けましょう。
急な症状変化に備え、あらかじめ担当の医療機関や訪問看護師と、連絡先・連絡の順番・対応方法を確認しておきましょう。ご本人の希望や病状に合わせて決めている方針がある場合は、その手順に沿って連絡してください。
急変でなくても、以前より少しの動作で苦しくなる、夜に眠れなくなる、発熱や咳が増えるなどの変化は、次の定期訪問まで待たずに相談しましょう。[2]
うぐいす在宅診療所への相談
うぐいす在宅診療所は、ご自宅や施設での診療と、訪問看護・介護など地域の関係者との連携を行っています。「息苦しさのために、生活の何が難しくなっているか」を、受診や相談の際にお聞かせください。治療方法だけでなく、本人がどのように過ごしたいかも、療養を考えるうえで大切な情報です。
通院が難しく在宅診療を検討している方は、在宅診療のご案内をご覧ください。すでに訪問診療を受けている方の急な症状については、契約している医療機関から案内された連絡先をご利用ください。
まとめ|息苦しいときの4つの視点
うぐいす在宅診療所|暮らしのケア
息苦しいときの4つの視点
01
姿勢を支える
上半身や腕を支えて、
本人が楽だと感じる姿勢へ。
02
心地よい風
顔にやさしい風を。
つらくなる場合は中止。
03
動作を分ける
座って行う・間に休む。
大切にしたい時間に体力を。
04
変化を相談する
いつもより苦しい、眠れない。
次の定期訪問を待たず連絡。
急な強い息苦しさ・胸痛・意識の変化は、直ちに担当の医療者へ連絡。
あらかじめ決めた連絡先・手順に沿って相談してください。酸素や薬は自己調整せず、個別の指示に従います。
本文をもとに作成したまとめ図。病状に合わせた個別の指示を優先してください。
主な参考資料
- Galbraith S ほか(2010):小型扇風機と慢性的な呼吸困難のランダム化比較試験。短時間の症状緩和に関する研究です。
- 国立がん研究センター がん情報サービス「呼吸困難・咳・痰」(2025年12月23日更新)。
- Hui D ほか(2020):がん患者の呼吸困難に関するESMO診療ガイドライン。がん患者を中心とする指針であり、個々の病状に合わせた判断が必要です。
- うぐいす在宅診療所「在宅診療」。
資料確認日:2026年9月23日。本文は一般的な情報です。個別の病状に応じた指示は、担当の医療者にご確認ください。
